UBL-033 HTTR 303[K] Weizen

ついに復活の時が来た

長きにわたる鬱状態を克服し、7ヶ月の沈黙を破って巴波醸造 | UZUMA BREWING LABORATORYが再始動する。

再始動にあたり、選んだスタイルはもちろん自分の一番好きなWeizenだ。

2018/9/27 設計

今回Weizenを選んだのはリハビリの面もあるし、前回仕込んだバッチであるUBL-025,6の追加実験でもある。

レシピは結論から言うと以下の通り。

Batch Size : 6.0L
IBU : 10.6
Farmentables : Wheat Malt (50%) Pilsner Malt (40%) Dextrine Malt (10%)
Hop : Tettnanger 6g(FWP) Tettnanger 6g(Boil 15min)
Yeast : G01 Stefon (Imperial Yeast)
Mashing : Acid Rest 45℃ 20min / Protain Rest 55℃ 5min / Maltose Rest 63℃ 40min / Saccharification Rest 72℃ 20min
Boiling : 90min
Fermentation : 18℃ 3days / 30℃ 2weeks

醸造界隈の方ならお気づきのとおりであるが、一つ、要素として異常なものがある。

それは二次発酵温度の30℃である。

今回使用した酵母の使用可能温度域は17~23℃であり、それを遥かに上回る超高温である。その理由諸々はこちらに…

さておき製作記です。

モルト計量とマッシング。Acid Rest工程が入っているStep Mashingなので2時間位かかる。

今回から、マッシング温度の履歴を定期的に記録している(逆に今まで記録してなかったのがダメすぎなのだ) マッシングの手続きは以下。

1. コンロで加熱し、常に撹拌しながら昇温

2. 目標温度に到達したら火を消す

3. 10分後再び昇温

以上の各Stepで温度と時刻を記録する。そうして作成した温度履歴が上図である。分かる通りメインのMaltoseRestの平均温度は61.5℃とかなり低めになってしまっている。これは考えれば当たり前で、目標温度の63度に達した時点で火を消しているからだ。今度からは目標温度+1.0℃程度まで昇温してから火を止めれば、適切な温度が得られると考えられる。

ヨウ素液を使って糖化完了を判断。マッシュアウト後、75℃に調整した湯でスパージング。ちなみに75℃の湯は100℃に沸騰させた水道水と常温のボトルウォーターを混合して作っている。混合比については比熱計算のエクセルシートを作ってやっている。

ホップはノーブルホップのTettnangerオンリーでシンプルに。煮沸中は低濃度を保つべく追湯を行う。

煮沸完了後、チラーで即座に冷却。水温が依然として30℃あるのでなかなか冷えないのが悩みどころだ。使用するイーストは初採用のImperialYeast。いつも使用しているWLP-300と同一の菌株のようだ。200BILLIONの酵母数がパッケージングされているため、スターターを作る必要がなく、1世代目の新鮮な酵母がそのまま使用でき、酵母数の推定もある程度の確度があるため、ピッチングレートの制御もしやすい。次も見かけたらこれを買おう。

しかし仕込みの最後の最後でミスを犯した。それは希釈時である。チラーで冷やしきれいない分の温度を下げる手法の一つに、冷蔵庫で冷やした水を使ってウォートを希釈する方法がある。ここで、冷やすことばかり頭に浮かび、水を入れすぎてしまったのだ。結果、初期比重がガクッと下がり、Session Weizenのような謎スタイルになってしまった。

教訓としては下記

・鍋の液面とウォート容量を対させるための計器を作る(棒かなにかを鍋底につきたて、その棒に各Lごとに線を描けば容量計が作れる)

・確実にウォート比重を計測してから希釈を行う

2018/10/20 ボトリング完了

という事で、二次発酵温度が30℃(=303K)に達したWeizenが完成した。名称はJAEAの実験炉であるHTTR(High Temperature Test Reactor)からとって、

HTTR(High Temperature Test feRmentation) 303 [K] Weizen

である。度数は標準レシピよりずっと低いがどうだろうか…

Taste Notes

■2018/10/26

瓶内二次発酵はまだ途中と思われるが開栓してみる。泡立ちはまだ少ない。半分程度か。高温発酵の結果のオフフレーバーを心配していたが、全く問題なさそうだ。初っ端はやはり明瞭なバナナを感じる。しかしクローブ感はあまりない。二口飲んでグラスを回すと、僅かな硫黄とスモーク感が出てくる。硫黄は熟成によって消えてくれればありがたい。口当たりは非常にリッチでスムース。初期比重を誤って下げすぎてしまったが、デキストリンモルトの影響か薄っぺらさは感じない。程よい甘さがあるが、これはプライミングシュガー由来だろう。酸味と穀物感をごくわずかに感じるが、悪影響を与えているわけではない。流石に薄めすぎたバッチなだけあって、もっと濃さがほしいところは間違いない。総括として、そこまで悪くなさそうだ。あと3~4日於けば十分飲めるレベルになっているのではないだろうか。楽しみだ。

■2018/10/29

炭酸の入りは完璧。泡持ちも良く、きめ細かい。初っ端は弱いバナナ。飲むと、リッチなボディだが、やや違和感がある。今までどおり酸味が強い。経験上、この酸味は熟成させることで消えていくので、しばらく様子を観てみようと思う。

■2018/11/1

炭酸量は完璧。泡持ち良し。きめ細やか。爽やかで弱いバナナ。飲んでみるとボディはちょうど良い。すっと飲めるがかといって薄すぎず、飲みごたえがある。口の中で豊かに泡立つ感じが心地よい。甘さは殆ど無くドライ。また当初感じられた酸味は消えている。2,3口飲むとバナナフレーバーは消えてしまって、オフフレーバのようなものが出てくる。これが何なのかわからない。

■2018/11/4

泡持ち悪化。バナナは弱くなり、オフフレーバが全面に。うーん、あまり美味しくない。

■2018/11/28

カーボネーション完璧。泡持ち良し。きめ細やかさ良し。色は濁りが落ちてクリスタルみたいになりつつある。開けたての香りは非常にフルーティーで濃さがある。しかし一度飲むと、酸味のある香りが支配的になる。ボディは丁度よい。のだが、酸味と後味の嫌な風味が不要だ。やはり失敗作と言わざるを得ない。カーボとボディはこれで良さそうなので、問題は醗酵だ。