SEV : Sleeve Exhaust Valve

過去最速の排気速度を有するフラッグシップエグゾーストキャノンを開発しようと志したのは2014年の8月でした。

エグゾーストキャノンの設計において開放速度を最重要視した場合、選ばれる機構は必然的に二重筒式となります。実は二重筒式の製作経験は2009年のMk.3以降無く、実に5年ぶりの設計製作でした。そうして5年間の歳月で手に入れた知見を動員して再設計された新たな二重筒式のコアとも呼べる部品が、このSleeve Exhaust Valveです。

新しいバルブの開発にあたって以下の4つのコンセプトを設定しました。

・軽量:バルブ重量はバックチャンバー減圧時の獲得加速度に直結するため、極力軽量であることが望ましい

・高強度:従来以上に高速で駆動されるため、強度の高い構造が望ましい

・駆動時の安定性:セミオートやフルオート駆動を見据えてストロークが安定する構造が望ましい

・ノズル開放までの加速長の付与:ノズル開放までの助走距離を確保し、ノズル全開までの所要時間を極力短縮する

これらのコンセプトを満足する構造を思案し、たどり着いたのが、この鞘構造(Sleeve)を用いたSEV : Sleeve Exhaust Valveです。SEVシステムを下記に示します。

SEVは内筒とその内部を摺動するピストンユニットから構成されています。この内筒とピストンユニットの関係が鞘のようであることからその名前をつけています。

それでは簡潔にその動作を観ていきます。

1. 充填操作:空気導入→バックチャンバー昇圧→ピストン前進&停止→メインチャンバー昇圧

圧縮空気の充填操作は従来のエグゾーストキャノンと大差はありません。

2. ノズル開放操作:バックチャンバー減圧→ピストン加速→ノズル開放

SEVの真価が発揮されるのはこのフェーズです。トリガーによってバックチャンバーが減圧されると、ピストンユニットは右向きの駆動力を受けて加速を開始します。この間、常に内筒はピストンユニットのOリングによってシールされているため、ノズルから圧縮空気が漏れることは無く、ピストンユニットは圧縮空気によって強力に加速され続けます。

この加速によってノズル開放直前、ピストンユニットの獲得速度は30 [m/s]を超え※、内筒とメインチャンバーは僅か1 ms以内に完全に接続されます。まさに「瞬間的」に圧縮空気が大気開放されたのと等しい性能です。こうしてノズルから生成される音響は従来のエグゾーストキャノンとは全く異なり極めて鋭い破裂音です。

※外筒内径48.6mm / 内筒直径23.4mm / 加速長50mm / ピストン質量0.05kg / 充填圧0.7MPa条件時

■スリーブバルブの特徴

■圧倒的なノズル開放速度

軽量性に起因する高加速度&助走区間での加速の結果、凄まじいノズル開放速度を得ることができます。この動画では通常の単管式を採用したMk.7 Type MとSEV&REVを採用したMk.16の比較を行っていますが、その射撃音の差は明らかです。さらに驚くべきことに、Mk.16のメインチャンバー容量はMk.7の60%しかありません。圧縮空気が作り出す音響において重要なのはその容積ではなく、立ち上がりなのです。

■軽量性と強度の両立

加速度向上の為、ピストンユニットの軽量化は不可欠ですが、同時にピストン停止時には相応の激しい衝撃が生じることになります。実際にMk.11等の単管式ではピストン停止時の座屈が課題となっていました。そこで従来の全ねじ+ピストンではなく、全てをジュラルミンの薄肉円筒で構成するモノコック構造とすることで、強度と軽量性を両立しています。製作にあたってはユニットをピストン部と内筒摺動部に分割し極力肉薄になるよう加工した後接着剤で接合する工法を取っています。

■摺動動作の安定性

SEVのピストンユニットは摺動時、内筒と外筒によって、とりわけ内筒には面で位置が拘束されているため、摺動時の安定性が非常に高いのが特徴です。この安定性を証明するのが秒間16発の超高速連射を達成するExhaust Cannon Mk.16であり、これだけの高速動作にもかかわらずトラブル無くキレキレの射撃を生み出すことができるのはSEVあっての事です。

■SEVを採用したエグゾーストキャノン

Mk.16 / SEV+ARREV(二段式)

Dec. 2014

超高速充填、超高速排気、そして超高速フルオートマチック連射をコンセプトとしたフラグシップ機。エグゾーストキャノンとして初の二段式排気機構を実装し、1段目にREVを改良したARREV(Automatic-Recovery REV)を、二段目にSEVを新たに開発実装することで、秒間16発という凄まじいサイクルでの強烈な衝撃波生成に成功した。チャンバー容量はわずか180ml程度であるにもかかわらず、他を圧倒する急峻な爆音を響かせる。

Mk.18 / SEV+REV(二段式)

Nov. 2014

史上最速のノズル開放速度を目指し、REVの試作機として製作したMk.14を1段目として流用した大型二段式エグゾーストキャノン。REVとSEVの前段加速の組み合わせで、メインピストンの獲得速度は最高40 m/sに達し、ノズルから出力される衝撃波のキレも過去最強を実現することができた。