Acetaldehyde Control
はじめてのラガーを作った際、とんでもない強度のアセトアルデヒドジュースを作ってしまった。そのトラブルシューティングのためにアセトアルデヒドの制御方法を調べたので以下にまとめる。
参考文献
- Cragt Beer&Brewing : Off-Flabor of the Week:Acetaldehyde( https://beerandbrewing.com/off-flavor-of-the-week-acetaldehyde/)
- Stone Brewing : GUIDE TO OFF-FLAVORS: ACETALDEHYDE(https://www.stonebrewing.com/blog/stochasticity-lab/2014/guide-flavors-acetaldehyde/)
- Tomas Barnes, "The Complete Beer Fault Guide V.1.4"(http://www.carolinabrewmasters.com/PDF/Complete_Beer_Fault_Guide.pdf)
■アセトアルデヒドの生成について
アセトアルデヒドは酵母によるグルコースを元にしたエタノール生成における中間生成物であり、発酵中に酵母の細胞からいくらかのアセトアルデヒドがウォート中に溶出する。そのため主発酵中にはどのビールにも大量に存在し、容易に感じ取れるものである。発酵が健全に進行していけば、主発酵中にウォート中に溶出したアセトアルデヒドの大半は再び酵母に吸収されてエタノール生成のために消費され、結果として官能閾値以下の濃度となり、オフフレーバとはなりえない。
しかし、発酵がうまく行かなかった場合、アセトアルデヒドは最終的なビール中に残存し、青りんご香りとして知覚され、更にひどい場合には深刻な頭痛すらもたらす。またアセトアルデヒドはエタノールの酸化反応によっても生成するため、発酵後のビールを過度に酸化させたばあいにも生じうる。さらに問題なのは、好気性バクテリアがそこに存在していた場合で、これらエタノールとアセトアルデヒドを代謝し酢酸を作り出すというおぞましい結果をもたらす。この場合はビールに露骨な酢の香りが付与される。またラガーリングなどの長期熟成中に於いても、酵母の健康状態が悪化していた場合、自己分解(Autolysis)によって酵母が死滅し、細胞中のアセトアルデヒドがが大量にビール中に放出されることもある。そのためラガーリングの際には酵母を熟成タンクから分離する事が必要である。
またアセトアルデヒドを生成しやすい菌株というのもあり、例えばアメリカンライトラガー用酵母(WhiteLabの型番ではWLP840に相当)は他の酵母と比較しアセトアルデヒドの生成量が多く、実際、アメリカンライトラガーのスタイルとして僅かな青りんご香は許容されている。しかしながら殆どのスタイルに於いて青りんご香は不適である。
■アセトアルデヒド対策
- 適切な量のイーストをウォートに投入する
アンダーピッチングでは発酵途中での発酵不良が発生する確率が高まり、結果としてアセトアルデヒドのエタノールへの代謝が十分になされないケースが有る。逆にオーバーピッチングであった場合についても発酵が高速で進行しすぎたためにアセトアルデヒド代謝が十分になされない場合があるため、適切なピッチングが必要である。
- 十分なエアレーションの実施
エアレーションが不足していた場合、発酵不良が発生する確率が高まるため、十分なエアレーションによる健全な発酵が必要である。
- 発酵未完了前の早期のラッキング、ファイニング、コールドクラッシングを防ぐ
発酵が未完了のままラッキング、ファイニング、コールドクラッシングのような酵母を物理的にビールから分離、ないし酵母の活性を下げる作業をしてしまうと、酵母によるビール中アセトアルデヒドのエタノールへの代謝が行われないため、アセトアルデヒドが十分に代謝されるまでイーストを主発酵容器中に残存させておく必要がある。
- 発酵完了後のエタノール酸化を防ぐ
アセトアルデヒドはエタノールの酸化によっても生成するため、たとえ主発酵完了後に青りんご香が知覚されなくとも、後のプロセスで過度な酸素混入があった場合にはアセトアルデヒドが生成する可能性がある。
- ラガーリング開始時にはラッキングを行う
ラガーリング期間中の酵母の自己溶融によるアセトアルデヒド放出を防ぐため、主発酵によるアセトアルデヒド除去が完全に完了したら丁寧にラッキングを行ってからラガーリングに移行する。