REV : Radial Exhaust Valve

前項で解説したAEVの唯一の難点はピストンユニット重量増加に起因する加速度の低下です。排気の瞬発力に重点を置いた高性能なエグゾーストキャノンを設計しようとした際、ピストンユニットの軽量化は非常に重要であるため、ピストンユニットを軽量に保ちつつ高速でバックチャンバー圧を低下させるシステムが求められます。その要求に答えるため筆者が開発したのが本稿で解説するREVです。

REVとはRadial Exhaust Valveの頭文字をとったものであり、日本語では「放射排気バルブ」とでもしておきましょう。このシステムをエグゾーストキャノンに組み込むことで、メインピストン形状は従来のまま、バックチャンバーを超高速で減圧することが可能になり、とりわけ元々ピストンが軽量な二重筒式の機体に応用することで飛躍的な性能向上が見込めます。

それでは早速構造を観ていきましょう。

0. REV(Radial Exhaust Valve)の構造

REVを組み込んだエグゾーストキャノンの構造を示します。本図に於いてメインピストンの左部は省略していますが、この記事を読んでいらっしゃる方であれば理解可能でしょう。

尾栓内部に小さなピストン(REVピストン)を追加した構造となっており、このピストンが収まるシリンダーは放射状(Radial)に伸びるポート(ラジアルベントポート)によって外部と接続されています。

またピストン内部には逆止弁が取り付けられており、圧縮空気は右から左へしか流れることはできません。

それではREVの動作シーケンスを観ていきます。

1. REVピストン駆動

まずは右のポートより圧縮空気を導入します。これによりREVピストンには左向きの力が作用し、REVピストンは左へ移動を開始します。

(逆止弁の説明で圧縮空気は右から左へ流れると述べましたが、実際には圧縮空気の通過圧損があるため、REVピストンを駆動するに十分な圧力差が生じます)

2. バックチャンバー充填

REVピストンが圧縮空気に押され左端に到達し、今度は逆止弁を通って圧縮空気がバックチャンバーへ充填されていきます。バックチャンバー圧の増大に伴い、メインピストンには左向きの駆動力が生じ、メインピストンは左へ移動を開始します。

3. メインチャンバー充填

左へ移動しきったメインピストンは停止し、圧縮空気はメインピストンとシリンダーの隙間を介してメインチャンバーへ充填されます。メインチャンバー圧がバックチャンバー圧と等しくなればエグゾーストキャノンの充填は完了です。

4. 発射トリガー

発射トリガーはREVピストンのバックチャンバーを排気することです。REVピストンには圧力差による駆動力が生じ、右へ移動を開始します。

5. REVピストン加速

圧力差による駆動力を受け、REVピストンは加速していきます。ここで着目すべきはラジアルベントポートは依然としてREVピストンによって閉状態にあるということです。発射トリガーを掛けてからこの状態になるまで、REVピストンは加速を続け、十分な右方向の速度を獲得します。

6. ラジアルベントポート開放

加速を続けてきたREVピストンはついに右端へ到達し、ラジアルベントポートを介してバックチャンバーと大気が非常に高速で接続されます。ベントポートの合計断面積はAEVと同様、極めて大きく、これによりバックチャンバーの圧力は急激に低下。結果、メインピストンには瞬間的に大きな右向きの駆動力が作用します。

7. メインピストン駆動、射撃完了

強力な加速を受けたメインピストンは高速でドライブされ、ノズルが開放されて圧縮空気が発射されます。

REVを採用したEキャノンの射撃シーケンスはこれで完了です。

REVの特徴

軽量性を重視したAEVピストン

REVの最大の特徴は、AEVをも上回るEキャノンシステム全体の駆動速度です。

バックチャンバー減圧の高速化のために大口径のベントポートを設けるという考え方はAEVとREVで共通しており、実際、REVのベントポートの断面積はAEVピストンのそれと同程度です。しかしAEVと全く異なるのがそのピストンの重量です。

REVシステムではメインピストンとREVピストンが独立しており、AEVで問題だったメインピストンの重量増大がありません。またREVピストンもPOM等の軽量な樹脂を使用し、中空で仕上げるなど極力軽く製作することで、駆動時の加速度を大幅に稼げます。これによりAEV以上の高速動作を可能にしています。

とりわけ二重筒式など、小型軽量のメインピストンを使う機構との相性は抜群であり、排気速度高速化の極地を目指すなら、本REVを採用するのがベストと考えます。

以上の試行はREV単体での動作ですが、分かる通り非常に鋭い音が発生し、その排気速度の速さがわかると思います。このスピードを贅沢にもメインピストンの排気に用いれば、高い性能が得られるのは自明です。

過去に設計した3段式エグゾーストキャノン(未完)

また余談ですが、このREVは「圧縮空気の圧力でバルブを駆動し圧縮空気を排気する」というエグゾーストキャノンの基本構造そのものに他なりません。つまり上述のREVを搭載したエグゾーストキャノンは2段式エグゾーストキャノンと言えるでしょうそのうえさらに2段3段…とREVを直列接続してやれば、非常に大型のメインピストンも高速駆動可能な多段式エグゾーストキャノンを構築することができます。

また、前項AEVで解説した電子回路とのアナロジーで言えば、REVは電流制御のトランジスタに相当し、REVを搭載したエグゾーストキャノンはダーリントントランジスタと言えるでしょう。キャノンのメカを直列することで増幅率を稼ぎ、僅かなトリガ流量を起点として最終的に高速大流量の排気を実現するというわけです。