Mk.6
設計
小型化がコンセプトの本機においてネックとなるのが圧縮空気の導入ポート、および排気トリガーです。従来のエグゾーストキャノンにおいてはエアカプラが上記2つの役割を担っていました。
エアカプラのプラグをキャノンに取り付けることで、そこからの空気の導入が可能になり、ソケットをプラグからリリースすすれば、キャノン内部のメインピストン後部の空気が排出され、ピストンユニットがドライブされます。
エアカプラは吸排気が非常にスマートで、かつ排気速度も稼げるためエグゾーストキャノンに置いてはとても重宝されますが、今回のようなペンシルサイズまでの小型化を考えた際、その大きさが問題となります。
上図はMk.6で用いる3/8インチの長ニップルに対してエアカプラを取り付けた時の様子です。シリンダー外径よりもエアカプラ外径のほうが大きく、到底スマートとは言えません。
そこでMk.6では先に述べた圧縮空気の導入と排気を両立し、かつシリンダー径よりも小径の機構として米式バルブを採用することにしました。
出典:Taka よろず研究所 自転車用新型バルブ(スーパーバルブ)を使う(http://www.geocities.jp/taka_laboratory/20060205-Bicycle-Valve/20060206-Super-Valve.html)
米式バルブとは主に車のタイヤ、またマウンテンバイク等に用いられるバルブであり、シュレーダバルブとも呼ばれます。通常のママチャリ等に採用されている英式バルブと異なり、中央部に「バルブコア」と呼ばれる部品がねじ込まれており、このバルブコアのピンを押すことで内部の圧縮空気を排気することができます。
このピンを押すと内部の圧縮空気が排気されるという仕組みを、エグゾーストキャノンのトリガーに応用します。
単管式の項を見れば分かるように、メインピストン背後の圧縮空気を抜くことでピストンユニットがドライブされ、ノズルから圧縮空気が急速に排気されるというのがエグゾーストキャノンのメカニズムです。
米式バルブは空気を導入することはもちろん、その保持、そしてリリースも行うことが出来るため、米式バルブの採用によりエグゾーストキャノンを更に小型化することができます。
製作
小型化がコンセプトということで、外シリンダーには3/8インチの長ニップルを採用しました。外径は17 mmとなります。
また今回、ニップルの両端のシール手法として、上図のように1/4インチのパイプタップを用いて雌ねじを切るという手法を採用しました。3/8インチのニップルの内径は約12.8 mmであり、1/4インチの管用タップの推奨下穴径11.5 mmに対してやや大きいものの、ぎりぎりタップ立てができる大きさとなっています。そのためこの内径をそのまま下穴として使ってしまおうという作戦です。
例のごとく内面は溶接の継ぎ目がひどいので、ある程度までヤスリを用いて継ぎ目を落としていきます。
ニップル側をバイスに固定し、ロッキングプライヤでタップをチャックし気合でタッピングしていきます。1/4のタップは通常のタップ・ダイスセットに入っているような小さめのタップハンドルではチャックできないことが多く、このような強引な手法で行いました。
無事ニップル内面に1/4の管用雌ねじを切ることが出来ました。この加工を反対側にも施し、チャンバーへの加工は終了です。
右がプラグ、左がホースニップルという配管部品です。それぞれノズル、尾栓のベースとして、更に旋盤で加工していきます。
まず尾栓から作っていきます。ホースを取り付ける部分を適当に突切りで切除し、
適切な下穴を空けた後、M7のタップを立てます。真鍮で出来ているのでさくさく加工できます。このM7の雌ねじに対して米式バルブを取り付けます。
先ほどの尾栓に取り付けるための加工を米式バルブに施していきます。この時はちょうどパンクしたマウンテンバイクのチューブがあったので、そこから摘出してきました。
ちなみにバルブ単体でも購入可能です。
http://www.monotaro.com/g/00210671/
元々ついていたゴムの皮膜ごと旋盤で落とし、適切な外径まで切削した後、ダイスでM7の雄ねじを切ります。これで先ほどの尾栓と接続可能となります。
2つを組み合わせるとこのようになります。
ノズルについてはベースと成るプラグに対して適当に穴を開けるだけです。
ピストンユニットはM4の寸キリボルトに対して適当なゴム板やナット類を用いて形成してあります。
メインピストンに関しては上図のように横から見た際に台形になるような加工を施してあります。このような形状にすることで、逆止弁的作用が付与され、性能向上につながります。
完成
ペンシルサイズまでの小型化を図ったMk.6ですが、生み出される動作は紛れも無くエグゾーストキャノンのそれであり、パワーアップとはまた異なったロマンを感じます。米式バルブを用いなければ旋盤なしでも作ることが可能なので、小パワーの入門機としても向いているかもしれません。
また今回の製作で米式バルブのエグゾーストキャノンへの応用が確立し、これは今後のエグゾーストキャノン開発において大いに活用されていきます。今回のような小型キャノンの製作はもちろん、スイッチとしての活用など様々な応用が可能です。
そのような点で小型化以上に意味のあった装置であったと思うところです。
2015/4/21 yasu