Bottling
醸造の全行程の中で瓶詰めは地味な工程ですが、地味に工数と時間がかかるのもこの瓶詰めです。
あれこれ工程最適化を重ねてきたつもりなので、その辺をまとめてみます。
■瓶詰めの工程
1.瓶の洗浄
2.瓶の殺菌
3.瓶の乾燥
4.ボトリングタンクへのビール移送
5.王冠の殺菌
6.瓶の再殺菌
7.プライミングとボトリング
8.酵母の添加(オプション)
9.打栓
10.刻印
瓶詰めの全行程の所要時間としては2時間半程度をみておく必要があります。
1.瓶の洗浄
まずは瓶を中性洗剤で洗浄し、チリやゴミ、油分などを洗い流します。特に油分が瓶内に残留していた場合、泡持ちに致命的な悪影響をおよぼすと言われているので念入りにやっていきます。
瓶の洗浄ということで、やることはシンプル。瓶に水を入れて、洗剤を入れて、内部をブラシで洗って、すすぐだけです。ただその作業の中にも効率化の余地はあります。
例えばこのシャワーヘッドですが、
ヘッドとホースの間にワンタッチ継手をかませることで、ヘッドをホースから一瞬で取り外すことができます。これが実はとても便利。
中性洗剤をそれぞれの瓶に適量突っ込んでいきます。
瓶の内部を洗うには、写真のような回転するブラシがベストです。突っ込んでぐるぐる回すだけで完璧に瓶内を洗浄できます。
アマゾンのリンクはこちら。
ブラシで内部を洗うと瓶内部は完全に泡で満たされ、これを完璧にすすぐのは実は非常に大変。何度も瓶内に水を入れては出してを繰り返す必要があります。
そこで取り出したるはこのアクリルパイプです。
このアクリルパイプが先程のシャワーホースに取り付けられたカプラといい感じでシンクロします。
これを下に向け、
瓶の奥まで突っ込んで注水します。この方法を取ることで瓶内にたまった泡は急速に排出されます。もう一つ一つの瓶を持って蛇口から水を注いで水を捨ててを繰り返すなど愚の骨頂です。
全てのボトルにパイプを突っ込んで泡を排出したら瓶の洗浄は完了です。所要時間としては2~30分といったところでしょう。
2.瓶の殺菌
瓶の洗浄が完了したら次は殺菌です。徹底的に雑菌を排除して万全を期します。殺菌方法としてはキッチンハイターなどの台所用漂白剤を使用してます。
下準備として、洗瓶に漂白剤を移しておきます。
瓶に入っていた水を一度全て捨て、漂白剤を適量瓶に注ぎ入れていきます。洗瓶を使うとこの工程が非常に楽です。
ここで再び先程のワンタッチ継手の登場です。
この継手、実はカプラ一つに対し、ソケット側が2つも付属します。一つはシャワーヘッドに取り付け、もう一つは自由に様々なツールに接続することができます。しかもネジ規格はJISの1/2の管用ねじ規格で汎用性も抜群です。
ということで今回はチューブフィッティング継手を取り付けました。
すると写真のようにシャワーホースにφ8のチューブを接続できるというわけです。
細いチューブを使って漂白剤を入れたボトルに静かに水を注ぎ入れていきます。ここでシャワー等を用いると、瓶内で漂白剤が泡立ってうまいこと水が入っていきませんが、細いホースなら泡立てること無くスムーズに効率よく水を充填できます。
瓶内部を殺菌液で満たした状態で30分位ほっておきましょう。これで瓶内は無菌状態です。
殺菌が終わったら、先程のアクリルパイプでもって殺菌液を完璧にすすぎ、殺菌の工程は終了です。
3.瓶の乾燥
殺菌液のすすぎが終わったら、水を捨てて瓶を乾かします。乾かすに当たっては上図のような100円ショップの網が便利です。
ダンボールの上に網をセットして、
あとは瓶をひっくり返して乾かすだけです。常に瓶が逆さになっているのでホコリ等の混入リスクも下がります。このまま10分位ほっておきましょう。
4.ボトリングタンクへのビール移送
ボトルへのビールの充てんに当たっては、瓶詰め用に上図のようなポリタンクを別途使用します。
(ここまででかいのは必要なくて、実際には10Lもあれば十分です。)
発酵容器から直接サイホンで頑張る方法もありますが、オリを巻き込む可能性が非常に高く、逆に面倒なことになるので毎回ラッキングも兼ねてポリタンクに移しています。
このポリタンクもあらかじめ漂白剤で殺菌の後、水で濯ぎ、更にダメ押しで内面にアルコールスプレーを吹いておきます。
同じく殺菌したホースで持って発酵瓶からタンクへビールを移送します。移送することでビールと瓶底にたまったオリが分離され、ボトルへの混入を防止することができます。一見面倒ですが、合理的なやり方です。
なおこの時、ポリタンクのタップを閉め忘れると、JamiroquaiのVirtual Insanityみたいになります(伝わらない)
ポリタンクへの移送を終えたら、タンクを高所へ移しボトルフィラーを接続します。
ボトルフィラーへの接続にはポリタンクに付属してきた謎のジャバラホースを使っていますが、無い場合はホムセンで適当なホースを買って、短く切り、継ぎ手として使うのががいいと思います。
5.王冠の殺菌
接液部は全て殺菌するとの考えのもと、王冠も殺菌します。まとめて鍋に入れて煮こんでやりましょう。
この工程についてはアルコールスプレーでも良い気がしてます。
6.瓶の再殺菌
念には念を入れて、ボトリング直前に更にアルコールスプレーで持って瓶を殺菌します。
まず王冠を載せる口の部分を殺菌し、
ボトル内部にも三回ぐらい吹付け、適当に瓶を回転させたり傾けたりして内面の全てをアルコールに接触させます。
これで殺菌についてはもう完璧でしょう。何かビールにトラブルが起きたとしてもボトリング工程のせいにはできません。
7.プライミングとボトリング
瓶内二次発酵の栄養として、ボトル内に糖分を添加します。
糖の種類としては酵母が代謝できる種類の糖を選んでやる必要があります。専門店でブドウ糖を調達してもいいですが、自分はスティックシュガー形態のグラニュー糖を使用しています。
プライミングの流れとしては、スティックシュガーの1/2あるいは2/3を瓶に入れるだけです。スティックシュガー一袋の重量としては3gが一般的であり、330mlの瓶に対して2/3(2g)で標準的な炭酸量、1/2(1.5g)でやや弱めの炭酸量に調整できます。3g全部を突っ込むと炭酸がハイパー強く、飲むのがしんどいビールが出来上がるので注意です。
スティックシュガーは普通の袋入りの砂糖と比べ、下記のメリットがあります。
・個包装のため殺菌が不要ですぐ使用できる
・包装ごとの重量が規定されているので計量が不要
通常、袋入りの砂糖でプライミングをするには下記の手順が必要です。
・袋から砂糖を取り出し、必要量をはかりで計量する
・鍋に砂糖を移し、適量の水を加え、沸騰させて殺菌する
・殺菌した砂糖水をボトリングタンクに入れ、ビールとかき混ぜる
自分も以前はこの方法を取っていましたが、砂糖水とビールを混合する際、上手く混ざらず、タンクの内部で濃度勾配ができてしまい、結果ボトルごとの炭酸量が大きくばらつくと言った事象がありました。解決策としてはボトリング前に激しくかき混ぜてやればいいのですが、そこでの酸化および雑菌汚染リスク、および種々の計量や煮沸に係る手間を考慮して、スティックシュガー方式に落ち着いたというわけです。
プライミングが終わったら、ボトルフィラーにアルコールスプレーをこれでもかと言うほどに吹きかけておきましょう。瓶詰めした後に思った結果が得られなくて、その時に殺菌不良だったかも?と無駄な心配をするよりか、贅沢にスプレーを使いまくったほうがマシというわけです。
これで瓶詰めの準備は完了です。フィラーをボトルに突っ込んでどんどん詰めていきます。
ある程度詰めていくと水位がタップ位置よりも下がってしまうので、そうなったらタンク全体を傾けて全てのビールを瓶へ移送します。この時空気が混入しないよう注意して作業を進めます。酸化はビールの大敵ですからね。
8.酵母の添加(オプション)
複数回のラッキングやコールドクラッシングなどの清澄化処理を行った場合、ビール中の残存酵母数が不足し、瓶内二次発酵が狙ったとおり行われず、どんだけ待っても一切炭酸が入らないということがあります。(実際、ラッキング→コールドクラッシング→ラッキングで二週間待っても炭酸が入らないケースを経験したことがあります
クリアなビール製造を目的として以上のような処理を行った場合、瓶詰めの直前に酵母を追加することが必要です。ベストな手法は発酵容器の底に残った酵母をスポイト等で改修し瓶内へ添加するやりかたです。添加するタイミングはビールを詰めたあと。ビール充填前の瓶には高濃度アルコールが溜まっており、そこへ酵母を突っ込むと一瞬で酵母が死滅する可能性があります。ラッキング後の発酵容器中に酵母がほとんど沈殿していない場合は乾燥酵母を別途添加するのがいいでしょう。
9.打栓
ついに麦から作ったよくわからん液体を一本の持ち運べる作品へ変える時がやってきた。煮沸消毒した王冠を瓶の口に載せていき、まとめて打栓器で栓をしていきます。
王冠を載せた状態。この状態で瓶に足を引っ掛けたりすると、全身が怒りに包まれて大変なことになるので絶対にやらないようにしましょう。
バシバシ打栓していきます。なんだかんだビールづくりの全行程の中で、この打栓工程で最も達成感を感じられる気がします。
10.刻印
打線が終わったら識別のために王冠に名前でも記入しておきましょう。赤の王冠に白い文字が映えますね。
打線完了後は日光が当たらない場所で瓶内二次発酵に移行させます。温度としては酵母の活動が活発になる常温がベストですが、温度が高すぎると今度は劣化につながるため、18度程度が理想のようです(Baird Brewing情報)。
大量の酵母が溶液中に残存するヴァイツェンなどでは早くて3日程度で炭酸が入りますが、念のため1~2週間ほど観ておくといい感じです。
ただ焦って開栓しても結局熟成は完了しておらず、本来のうまさは未発現なことがほとんど。
どのスタイルについても最低1ヶ月は熟成させておきたいところです。度数の上昇に伴って必要な熟成期間も長くなり、度数の高いバーレーワイン等になると、3~4ヶ月位は必要です。
2018.3.25 yasu