Hand-Held Water Jet Cutter Mk.1

携行可能なウォータージェット生成装置の製作

エアコンプレッサーをパワーソースに160MPaのウォータージェットでキュウリを切断

時に、西暦2020年7月29日

転職により始まった人生で初めての電車通勤。

ようやく会社にもなれ始め、7月末に差し掛かかった頃、ふと電車内から中高生の姿が消えていることに気づいた。


「そうか、世の中は夏休みなのか…!」


「夏休み」という感覚を久しぶりに取得し、脳内に思い浮かんだはのは一つの欲求…

そう、夏休みはないけど、夏休みの工作はしたいのである。

すると、突然以下のような流れが自然発生したのだ。

水鉄砲 自作コンテスト 開演です!

■方針とか

ということで、どういうわけかみんなで「水鉄砲」を作る企画が始まってしまった。

流れで発起人になってしまったからには気合を入れないわけには行かない。巴波重工といえばエグゾーストキャノンであるが、エグゾーストキャノンを用いた水鉄砲は過去に何度もガチ製作している。

そこで今回はあえてエグゾーストキャノンのメカは封印し、全く新しい「携行型超高圧ウォータージェットガン」を開発することにした。

エグゾーストキャノンで水を発射する水鉄砲の特徴が「大流量」ならば、今回めざすのは「高圧」の水鉄砲。超高圧のウォータージェットでキュウリくらいスパッと切断したいものだ。開発の肝となるのはいかにして高圧を生み出すか、そのメカニズムである。

初期検討として、消防ポンプや高圧洗浄機、ウォータージェットカッター、エア用増圧弁や油圧ジャッキ、グリスガンに至るまで、あらゆる先行例を調査した。その結果、高圧の生成はある一つの機構に収束することがわかってきた。

■パスカルの原理と圧力を介した荷重変換

ということで高圧生成に話を進める前に、高校物理で超絶おなじみ、パスカルの原理を説明する図に登場頂く。

面積比の異なるピストン/シリンダーが流体的に接続されたこの模式図。当時としたらナンノコッチャといった感だが、実は高エネ工作をするに当たり大いなる可能性を秘めた構造なのである。

授業で習う内容は「面積A1のピストンに荷重F1を与えると、面積A2のピストンにはA2/A1×F1という荷重が生じる」というそっけないものであった。式で表すと次のとおりだ。

しかしここで一旦次のように式の形を変えてみる。

各項の関係性に着目すると、これは「圧力Pを介した荷重変換機構」と捉えることができる。文章に直せば、

・A1側に入力された荷重は圧力に変換され、流体を介してA2側に伝達され荷重に再変換される

・この時に発生する荷重はA1とA2の比率に応じて変化する

ということだ。

たとえばここでA1に対してA2を大きく設計すれば、A2にはA1に入力した荷重よりもずっと大きな荷重を生み出すことができる。この原理を応用する最たるものが油圧装置であり、人力で車を持ち上げることができる油圧ジャッキも、要するに人力で小さなピストンを押し、大きなピストンで車を持ち上げているだけなのである。

「流体による圧力を介した荷重変換機構」、シンプルなようでその効果は絶大なのである。では、この構造に一捻り加えてみよう。

■荷重を介した圧力変換