■卓上減圧蒸留器使用方法

How to Use Micro Vacuum Distiller

■ボイラーユニットのセッティング

ボイラーユニットの構成部品(左上から右下へ)

・アクリル保護カバー

・ガラスボイラー

・ボイラー蓋

・傷つき防止パッキン

・加熱プレート

・水蒸気蒸留ステージ

・飛沫同伴防止板

ガラスボイラーに傷つき防止パッキンを入れます。傷つき防止パッキンの上に加熱プレートを敷きます。パッキンがあることで加熱プレートとガラスボイラーが直接接触することを防ぎ、ガラスボイラーに傷がつくことを防ぎます。

水蒸気蒸留の場合は、この状態で水をガラスボイラーに注いでおきます。煮出し蒸留の場合は蒸留する素材も入れておきます。なお、仕込み量の最大量は750ml程度であり、これより多い場合は蒸留中の泡がコンデンサーユニットに入り込むリスクが高まります。

加熱プレートの支柱に水蒸気蒸留ステージを時計回りに回してねじ込み固定します。強くねじ込むとはずれなくなる恐れがあるため、程々の力で問題ありません。

水蒸気蒸留を行う場合は、この水蒸気蒸留ステージの上に素材を載せます。

飛沫同伴防止板をボイラー蓋に上図の通り取り付けます。

飛沫同伴防止板を取り付けることで、蒸留中に生じる水飛沫がブロックされ、蒸気だけがコンデンサーに流れていきます。これによって、蒸留液の純度が向上し、精度の高い蒸留に繋がります。

曲げ加工前

曲げ加工後

なお、経年使用に伴い飛沫同伴防止板がボイラー蓋から脱落する様になった場合は、上図の通り切り欠き部分を手で広げます。こうすることでボイラー蓋に対する保持力が再生します。

飛沫同伴防止板を取り付けたボイラー蓋をガラスボイラーに乗せます。この際、ボイラー蓋の金属部分をガラスボイラーに強くぶつけると割れる恐れがあるため、接触させないよう慎重に作業を行ってください。

ガラスボイラーにアクリル保護カバーを被せます。

減圧蒸留ではガラスボイラーの内部を減圧するため、ガラスの外側から内側へ押す力が常に発生しています。そのため、もし仮にガラスボイラーに傷が入っていた場合、この力によってガラスが割れる可能性があります。アクリル保護カバーがあることで、もしも仮にガラスが割れた場合に破片が飛散するのを防ぎます。

(なお、ロータリーエバポレータでも減圧によるガラスの割れと飛散は報告されており、安全性向上ための有料オプションとしてガラスへの樹脂コーティングがラインナップされています。)

ボイラー蓋にコンデンサーユニットを搭載します。上図の通り、蒸気出口の継手にコンデンサーの配管位置を一致させ、載せるだけで接続は完了します。

■冷却水配管のセッティング

上記動画を参考に、同梱の水栓用継手を水栓に取り付けます。取り付けにあたっては、あらかじめ継手の内面を水で濡らしておき、強い力でぐっと水栓に差し込むのがコツとなります。

水栓の先端に泡沫金具がついている場合、下記の製品を適用することで、対応可能です。

https://amzn.asia/d/bDUfMj1


水栓に取り付けた継手(写真は特殊なセットアップになっています)に付属の冷却水チューブ用継手を取り付けます。継手に付属のチューブを奥まで手で差し込みます。

水栓に接続された冷却水の供給側チューブをコンデンサーの左側継手へ。冷却水の排水側チューブを右側継手に接続します。チューブは使用される環境に合わせてハサミでカットしてください。

冷却水の排水側チューブの先端には上図の通り金属製継手を取り付けた後、シンクの底に置きます。取り付けた金属製継手が重りになって、運転中のチューブ位置が安定します。

■蒸留液配管のセッティング

ボイラーユニットとコンデンサーユニットが一体となった蒸留器(以後、蒸留器)をIHヒーターに乗せ、その隣に蒸留液回収瓶を設置します。また真空ポンプを任意の位置に設置し、上図の通りチューブで接続します。

バーカウンターで運転する場合、カウンター上に蒸留器と蒸留液回収瓶を設置し、カウンターの背後に真空ポンプを設置するとゲスト側からポンプが見えずスマートです。

追加でチューブが必要な場合は、下記チューブが使用できます。

https://www.monotaro.com/p/4902/6162/

■減圧蒸留機の運転

蒸留液回収瓶のバルブが閉まっている状態で、真空ポンプの電源をONにします。

蒸留液回収瓶と真空ポンプが正しく配管されていれば、上図の通り約-90kPa程度まで減圧されます。(真空計が表示する値はあくまで目安につき、真空計の個体差によって値がズレる場合があります。-80kPa以下まで下がっていれば問題ありません。)

まずは蒸留液回収瓶のバルブを締めた状態で真空ポンプを動かし、ここまでの配管が正しく行われていることを確かめてから次のステップに進むことを推奨します。

真空が正しく引けていることを確認したら、蒸留液回収瓶のバルブを開きます。

バルブを開くとボイラーユニット内部が減圧されていきます。減圧によって水に溶け込んでいた空気が泡となって抜けていきます。この工程を脱気と呼び、加熱前に十分な脱気を行うことで、加熱時に急激な沸騰が起こることを防ぐことができます。そのため、起動時にには圧力が下がりきってから1分程度放置し、十分に脱気を行うことを推奨します。

水栓を開き、冷却水をコンデンサーユニット内部に導入します。供給流量は1秒間に液面が1cm上昇するスピードで十分です。

コンデンサーユニット内部に冷却水が満たされた状態。

付属のLEDライトをコンデンサーユニットの頂上に載せると、コンデンサーユニットが光ります。ライト頂部を長押しすると色が3段階で変化します。

IHヒーターで加熱を開始します。蒸留開始時の出力は300Wを推奨します。これ以上の場合、内部に溶け込んでいる空気に起因して非常に激しい沸騰が生じ、泡がコンデンサーユニットに入り込むリスクが高まります。

一度蒸留が安定したら出力を上げても問題ありません。

なお、IHヒーターについては下記製品が小型かつ出力調整が容易なため推奨品とさせていただいております。
https://dretec.co.jp/kitchen_appliances/ih_cooker/di-218/lang-ja

【注意】

蒸留にあたり、ボイラー内部の液面が加熱プレートを下回らないようにしてください。完全に干上がった状態で運転を続けると、加熱プレートの温度が高まり続け、傷つき防止パッキンを焦がしてしまいます。

■減圧蒸留中のサンプリング

減圧蒸留を進めていくと、蒸留液回収瓶の液面が上がってきます。液面がキャップ部分に到達してしまうと、蒸留液が真空ポンプ側に吸引されてしまい、ロスとなってしまいます。そのため、それ以前のタイミングで別の容器に蒸留液を移す必要があります。蒸留液を別容器に移すことで、蒸留液のテイスティングができるため、ヘッド・ハート・テールのタイミング決定に役立ちます。

サンプリングのため、まずは蒸留液回収瓶のバルブを締めます。その後、真空ポンプの電源をOFFにします。

蒸留液回収瓶に差し込まれたバルブを外します。こうすることで、回収瓶内部に空気が入り、瓶が大気圧に戻ります。

瓶内部の圧力を大気圧に戻してから、キャップを回して取り外します。こうすることで、内部の蒸留液を別の容器に回収できます。

回収した蒸留液は順番に異なるグラスに移し順番にテイスティングを行えば、時間経過とともに風味がどう移り変わっていくか、そのトレンドが容易に判別できます。あとはテイスティングに基づき、ほしい蒸留液同士をブレンドすることで、テイスティングに基づく高品質なカッティングができるということです。

■減圧蒸留の終了と洗浄

減圧蒸留が終了したら、IHヒーターと真空ポンプを止めます。コンデンサーユニットの冷却水を抜くため、上図の通り冷却水の排水側のチューブを抜きます。冷却水の供給側の継手を外し、低い位置に持っていくと、チューブを介してコンデンサーユニット内部の水が抜けていきます。

コンデンサーユニットから蒸留液のチューブを抜きます。

上図の通り、コンデンサーユニット、アクリル保護カバー、ボイラー蓋を取り外します。

ガラスボイラー、ボイラー蓋、加熱プレート、水蒸気蒸留ステージ、傷つき防止パッキンは丸洗い可能につき、使用後は食器やシェイカーと同様、洗剤とスポンジで洗浄してください。食洗機も使用可能です。

コンデンサーユニット内部の水通し洗浄のため、上図の通りチューブを配管します。蒸留液回収瓶のバルブが開いていることに注意してください。

水栓を開いて水を流すことで、銅製冷却コイルの内部、チューブ、蒸留液回収瓶のキャップ内部に対して水通し洗浄ができます。

水通しが終了した状態では、冷却コイル内部に水が残ったままにつき、次の方法で水を抜きます。

上図の通り配管し、真空ポンプの電源を入れます。真空ポンプがコンデンサーの銅製コイル内部の水を吸引し、蒸留液回収瓶に集めることができます。

真空ポンプを運転中に蒸気が通るパイプを指で塞ぐと、配管内が真空になります。その状態から急激に指を離すことで、配管内に急速に空気が入り込み、内部に残った水滴を一気に排出できます。これを繰り返すことで、コイル内部から水分を取り除き、乾燥できます。