内部構造としては、Mk.5で確立した単管式をそのまま用いた物となっており、その動作原理については「単管式」の項に解説しています。Mk.5のパワーは小さいながら抜群でしたが、装置自体は鋳鉄製の水道管を組み合わせて作られたものであり、そのルックスについては到底洗練されているとは言えないものでした。
今回はそのガワをMk.4でも採用した足場パイプと旋盤で加工したノズル、尾栓で構成することで、無駄のないシンプルで頑丈な装置を目指しました。
以下製作記事です。
今回も前回同様、旋盤をフル活用して部品を加工していきます。旋盤を使って一番初めに製作したMk.4についてはその仕上げなどはなかなかひどいものでしたが、Mk.5,6の製作を経てなんとなくコツなどがわかってきたので、外観にはこだわって作ろうという意気込みがありました。
実はMk.7の製作の動機は、上記の写真のような謎の巨大ボルトを2つほど高校のゴミ捨て場で発見したことに起因します。このボルトの頭の部分がちょうど足場単管の直径と調度良く、このパーツと足場単管を組み合わせたキャノンが脳内に浮かんでしまったのです。
この謎ボルトのは鉄製であり、回収時にはサビだらけであったため、ひとまず素材として使えるように端面出しをしていきます。
一方について端面出しなどが完了。ついでに余分なネジ部分も切り落とし、普通の鉄丸棒へと蘇りました。
とりあえずいつか空けるだろうということで、ドリルで穴加工などもしておきました。(実はこの時点では設計図の一枚も描いていない
シリンダーとして利用する足場単管をディスクグラインダーを用いてバリバリ切断します。切断面はかなり荒れるので、切断後は棒ヤスリで整えます。
足場単管の内面には写真左のように溶接の継ぎ目が存在しています。
今回はこの単管の両端にそれぞれノズルと尾栓差し込み、Oリングを用いてシールを行うため、Oリングでシール出来る程度に単管内面の継ぎ目を落とす必要があります。
この時は半円ヤスリを使って写真右のように根気よく落としましたが、正直これ以外にいい方法が見つかりません。
尾栓とノズルをシリンダーに固定するためのボルトを通す穴を開けるため、単管にまずポンチを打ちます。養生テープには等間隔にマジックで線が引いてあり、これを基準に6つの穴を等間隔に開けるという算段です。
穴あけはハンドドリルを使って気合で行いました。意外となんとかなるものです。
穴を開けたらタップでM6の雌ねじを立てます。今回新たにMonotaRoブランドのスパイラルタップとドリルペーストを導入しました。スパイラルタップは切子が連続的に上部へ排出されるのが特徴で、通常のタップと異なり、タッピングの最中に切り返す必要がありません。
写真左のドリルペーストと合わせて使うことでさくさくタッピングが進みます。(ちなみに足場単管という薄物に対して雌ねじをたてるという工法は、十分な山数が確保できないため推奨されません。
タッピングが全て完了したので、黒染め六角穴付ボルトを取り付けてみる。いい感じです。調子に乗って単管内部にLEDライトを仕込んで光らせています。
胸に光を当てたらアークリアクターっぽくなりました。
旋盤を使って尾栓とノズルを仕上げていきます。写真は尾栓を加工している最中であり、すでにエアカプラのプラグのための1/4インチの管用雌ねじは切られ、プラグがねじ込まれています。
溝の加工については厚さが1.5mm程度の突切りバイトを使い、慎重に切り込んでいきます。
加工が完了した尾栓。下部のOリングが圧縮空気のシールを担い、上部のOリングはシリンダーとの隙間を埋める役割があります。その中間に位置する溝に先ほどのボルトをねじ込むことで、尾栓をシリンダーへ強固に固定します。
シリンダーに組み付けてみる。渋くていい感じです。
尾栓が完成したので次はノズルを作っていきます。何故か雄ねじ部分がついたままですが、どんどん行きます。
雄ねじ部を残したまま取り付けてみると、そういうアートっぽくも見えます。
ノズルについても先程の尾栓と同様の溝を突切りバイトで加工します。
外周切削が終了したら雄ねじ部を切り離します。
最後に中ぐり加工を施し、ノズル部が完成です。
シリンダーとノズル、尾栓とキャノンの外側を構成するパーツが全て完成したので、最後に動作の要であるピストンユニットの製作にとりかかります。
写真はM8のナットに穴を2.5の穴を3つ開け、M3のタップを立てたところです。これがピストンをシリンダー中央に保持するピストンホルダーのハブになります。
M3の雄ねじをねじ込むことでピストンホルダーとなります。
ゴム板とワッシャー、フランジナット、そして先程のピストンホルダーを組み合わせると、写真のようにノズルをシールするためのピストンが完成です。
メインピストンには前回のMk.6で製作したピストンの構造をさらに発展させ、写真のようにナットとワッシャーでゴム板を挟み込む、サンドイッチ方式の物を製作しました。
ナットの締結圧力を可変することでゴム板の伸び量を調整でき、シリンダー内面と適切な密着を容易に得ることができ、Mk.5までで採用されていたまな板を用いたピストンと比較し飛躍的に使い勝手が良くなっています。内面への追従性が良いため、シリンダー内面に溶接の継ぎ目が存在していても問題なく、足場単管などの内面がラフなパイプをシリンダーとして用いる際の決定版とも言える方式です。
加えて写真のようにゴム板の端部に面取りを施すことで、右へは流体は容易に流れ、左には流れにくくなります。このように面取りによって簡易的な逆止弁としての機能を付与することができ、エグゾーストキャノンのメインピストンとして性能向上が図られています。
(メインピストンについては「Sealing」に詳しく解説しています。
全体像。ホームセンターのネジコーナーに有る物を組み合わせて構成されているため、非常にシンプルで作りやすくメンテナンスも容易です。
シリンダーに収めるとこんな感じ。摺動抵抗も比較的小さく、動作は良好です。
これにてMk.7を構成する全ての部品の機械加工が終了しました。すべてのパーツを組み合わせての動作試験は極めて良好、一発で完璧に動作しています。パワーはMk.5と同様、CD程度なら容易に破壊できるほど。サイズ感もちょうどよく、過去最高の完成度です。
さて、今回はこれだけでは飽きたらず、更に完成度を高めるため塗装によりもう一手間加えることにしました。
足場パイプ用の塗装のプライマーとして有名な「ミッチャクロンマルチ」を購入。ラッカーを塗る前に吹き付けることで、強力な下地を形成します。
塗装にはハンガーがちょうど使いやすかったです。そして塗装完了
塗装完了。つや消しの非常に美しく厚い塗膜を形成することができました。
Mk.7最後の仕上げとして、赤の革紐を巻いて、先端同士を木工用ボンドで接着しリングを作ります。
ノズル、尾栓とシリンダーの隙間を埋める部品にはいつもは黒のOリングを使用していましたが、ここを先ほどの赤の革紐に換装。黒のボディに対しワンポイントの朱が入ることで、デザイン性も高まりました。
Mk.6に至るまでに洗練されてきたエグゾーストキャノンの基本構造。そして今回のMk.7の製作を経て、その製造手法も多くの改良がなされました。その甲斐あってか、完成後の幾度に渡る射撃を経てもリークや内部部品の損傷などは無く、ノーメンテナンスでも問題なく動作する過去最高の信頼性を有する機体になりました。
このMk.7の設計を基盤として現在に至るまでのエグゾーストキャノンシリーズの基盤が構築されたといっても過言ではなく、その意味で非常に大きな役割のあった機体であったと思うところです。
2016.01.31 yasu