Trigger

ここではエグゾーストキャノンにおける発射トリガーについて、その高速化或いは高機能化について考察していきます。

エグゾーストキャノンにおける発射トリガー

単管式キャノンの発射シーケンス

エグゾーストキャノンにおける発射トリガーはMechanismの項でも書いたように、上図の2番目の図に対応します。

すなわちメインピストン後部空間の圧縮空気を排気するという動作です。

メインピストン後部空間の圧縮空気を排気するということはすなわち、メインピストン左右に圧力差を作り出し右向きの駆動力を発生させるということに相当します。この駆動力を受けてメインピストンが右側へ急速に駆動されることでノズルが開き、内部に貯められた圧縮空気がノズルから発射されます。

すなわち「メインピストン後部空間の圧縮空気の排気速度」が「ノズルからの圧縮空気の発射速度」に効いてきます。

後部空間の排気が遅いと、メインピストンが駆動される速度も遅くなり、結果ノズルが開く速度も遅く、発射される圧縮空気の立ち上がりは緩慢なものとなってしまいます。

1. エアブロワー

一番初めに製作されたエグゾーストキャノンである「図解アリエナイ理科ノ工作」に掲載されているプロトタイプ機には、メインピストン後部空間の排気のために、以下に示すようなエアブロワーが採用されていました。

アリエナイ理科ノ工作により一躍有名になったエアブロワー(ちなみにここで買えます)

形状がいかにもトリガーにしてくれと言わんばかりのそれであり、赤のトリガーを押すと弁が開いてエアーが流れる構造になっています。k開放時に形成される流路の最小断面積はおおよそ10mm2程度であり、流量が非常に小さいのが難点です。

2. エアカプラのリリーシング

エアブロワーを超える流路の面積を持つ排気ツールとして、同じく「アリエナイ理科ノ工作」における消火器キャノンで採用されたのがエアカプラのリリースによる排気です。

Mk.7 Type M

上記のようにキャノンの後部にエアカプラのプラグを取り付け、エアーの供給と排気を一箇所で兼ねるという非常に合理的な方式です。カプラのソケットを接続しエアーの充填、そしてカプラをリリースすることで後部空間の排気を行います。

こうして形成される流路は左上の写真のプラグ内流路であり、その流路断面積は50mm2と、先ほどのエアブロワーの10mm2と比較して圧倒的に大きいため、メインピストンはより急激な加速を受け、結果、発射される圧縮空気の立ち上がりは大幅に鋭くなります。

日東工器 ハイカプラ 40SH400SH(大口径)との比較

さらにこのエアカプラについては上図のような更に大径のシリーズもあり、流路の断面積は小型のカプラの二倍以上の130mm2もあります。大型のピストンを用いた場合にはこのカプラを採用することで強力なドライブが達成できるでしょう。

このエアカプラを用いたトリガーの様子を動画で示しました。使用機種は最もスタンダードなMk.7 Type Mです。なかなかキレのある射撃が実現できています。

一方このトリガーの難点としては、発射時にキャノンを支える腕が片腕だけになってしまい、安定しないことが挙げられます。動画でも射撃時に筐体がふらついており、装置が大型大重量化するに伴って、キャノンを片腕で支えざるを得ないエアカプラによるトリガリングには無理が出てきます。

3. バランスバルブ

このエアカプラの問題点を解消し、安定した大流量の排気を実現するのがバランスバルブです。構造を下記に示します。

上図のように、バルブはシリンダーと連結された2つのピストンから成ります。オレンジで示している空間は圧縮空気、青で示している空間は大気圧とします。この2つのピストンの間に圧縮空気を送り込むと、2つのピストンの面積は等しいためピストンに作用する力は「バランス」し、動き出すことも、空気が漏れ出ることもありません。ここでこのピストンを右へ押し込むことで、圧縮空気を大気へ急速に開放することができます。

バランスバルブはその構造ゆえ、圧力がどれだけ高くても操作に必要な力は増えません。一方でシリンダーの内径を大きくすれば、大流量を制御できるため、エグゾーストキャノンのトリガーにはぴったりというわけです。

実際に製作してみると上図のような部品構成となります。スプリングを仕込んでトリガーを押し込んだ後に自動的に元の位置に戻るようにしてやると便利です。

押し込むとこのような感じになります。またキャノン本体に取り付けるとこのような感じです。側面にポートを設けて取り付けるとちょうど銃の引き金の位置にバルブが来ていい感じです。これによって、両手で筐体をホールドしたままの射撃が可能になります。

冒頭で紹介したエアダスターとバランスバルブの排気速度を比較した動画です。動画で分かる通り、バランスバルブを利用したほうが急速に圧縮空気をパージできます。

4. 米式バルブ

最後に変わり種として米式バルブを紹介します。米式バルブとは主に車のタイヤ、またマウンテンバイク等に用いられる逆止弁であり、シュレーダバルブとも呼ばれます。

出典:Takaよろず研究所 米式バルブの内部構造 2018/11/03

(http://www.geocities.jp/taka_laboratory/20060205-Bicycle-Valve/20060206-Super-Valve.html)

出典 : Wikipedia, Schrader valve 2018/11/03

(https://en.wikipedia.org/wiki/Schrader_valve)

通常のママチャリ等に採用されている英式バルブと異なり、中央部に「バルブコア」と呼ばれる部品がねじ込まれており、このバルブコアのピンを押すことで内部の圧縮空気を排気することができます。この仕組みをエグゾーストキャノンのトリガーに応用しようというわけです。

Exhaust Cannon Mk.6

初めてエグゾーストキャノンに米式バルブを応用した作品です。専用のトリガーを設けてバルブピンを押し込む構造をとっています。

Exhaust Cannon Mk.12 Type M

しっかりと設計製作したMk.12では、バルブの頭を僅かに旋盤で落とすことでピンを露出させています。これによって操作性が向上しました。

ピンの押し込みによって形成される流路の断面積は非常に小さいものの、充填容量の小さいEキャノンのトリガーにおいては十分使用できる事がわかります。

またAEVと呼ばれるシステムを組み合わせることで、このように小さな米式バルブでも大型のエグゾーストキャノンをドライブすることも可能です。

この機構の詳細については次項AEVにて解説します。

まとめ

以上の比較をまとめると下記の通りとなります。

エアダスター:操作性に優れるが、流路の最小断面積が小さく排気速度は遅い

エアカプラ:排気と吸気操作が可能で使いやすく流路断面積は大きいため排気速度は大きいが、操作時の安定性に欠ける

バランスバルブ:操作性に優れ、かつ大流量をハンドリングできるため排気速度の高速化が可能

米式バルブ:排気流量は極小だが、小型のEキャノンならば使用可能。また後述のAEVと組み合わせれば大型機への適用も可能