第四章 開店、「青葉山おでん」

2016年11月25日20時25分、青葉山に赤い光が灯った


第四章 開店、「青葉山おでん」


暖簾から漏れてくる光が絶妙

店主側から観る光景は紛れもなく”屋台”のそれだ

おでん鍋と熱燗鍋を調理台にセットし、テーブルに酒瓶を並べれば、最高の空間の完成だ。

大将にオーダーを告げて宴を始めよう。

仙台朝市で仕入れた熱々のおでんを

大将に取り分けてもらったら、

通常ではありえない品揃えの

地酒とビールの中から、

好きな一杯を選んで注いで…

青葉山おでん、ここに完成


立ち上る湯気が白熱球に照らされ輝く

うまい、うますぎる!!

この時、外気温1℃。

凄まじい寒さの中、やや温度高めの高清水と暖かいおでんが冷え切った体にとにかく染み渡るのだ…

そして押し寄せてくる達成感。それは発表が終わった達成感、そして何より酒呑みたちと一ヶ月をかけて最高の屋台を創り上げた達成感だ。

自らが作り上げた屋台で達成感と共に味わうおでんと酒。それはもう筆舌に尽くし難いものだった。

最高だ。最高すぎる。我々はついに理想郷を完成させてしまったのだ。

外観。ビールケースがいい味出してる

内観。Z軸にまでこだわった空間設計を褒めて欲しい

一旦冷静になって我々の理想郷を紹介しよう。

おでん屋台が組み上がって30分後の写真が上の写真だ。

どうだろうか、この文句のつけようのない居酒屋アトモスフィア空間は。とりわけ左の棚に積まれた食器と酒が本当に良い雰囲気を出している。まるで何年もそこを定位置として青葉山の成長を見守ってきたかのような趣のある佇まいだ。

わずか30分で人間はこれほどまでに雰囲気に包まれた空間を創出できるのである。

ここで、左の棚の前端をよく観てほしい。

棚の住人棚の住人

この棚には招き猫と狸の置物が鎮座してるのだ。

「やっぱり居酒屋にはこれが必須アイテムだと思いまして!」と独自の判断で彼らを屋台に招き入れた買い出し担当の後輩を僕は心から賞賛したい。

やっぱりこいつらは紛れもなく酒呑みアベンジャーズだ。

割り箸なんて使ってるようじゃ素人だ。専用の箸立てに専用の箸がここでのスタンダード

熱燗鍋システムも完璧に動作している(沸騰しているような気もするがそれはきっと気のせいだ)

買い出し担当の後輩の提言どおり、まとめ買いした食器類が本当に良い統一感を演出している。こういう小さなこだわりが全体の完成度をぐんと上げてくれるのだ。

皆でワイワイやっていると、なんと専攻の先生方が一杯やりに来た。

専攻前に突如出現した屋台で熱燗を飲み交わす先生二人

手酌が様になる先生。これが貫禄か…

「勤務を終えて研究棟を出ると、何故か目の前におでん屋台があった。」

一体何が起きているのだと先生方も困惑したことだろう。

だが、屋台のビールケースに腰掛ければもう一瞬で上の写真のような状態。

これが我々の作り出した理想郷の力だ。

先生、お勘定の時

先生はしばらく日本酒とおでんを楽しんだ後、「ちょっとまってて」と言って研究棟に戻っていった。

とおもったら今度は手に何かを携えて戻ってきた…

プレミア芋焼酎「佐藤 黒」が在庫に追加されてしまった

なんと手に持っていたのは鹿児島のプレミア芋焼酎「佐藤 黒」。しかも一升瓶である。なんでこんなものが研究棟から出てくるんだ… 色々と理解が追いつかないが、その男気に心から感謝せざるを得ない。

いや?もしかしたらこれは我々にくれたわけではなく、””ボトルキープ””として持ってきた可能性も否定できない。

もう半分ぐらい飲んでしまったが。


何れにせよ、かくして「東北の地酒6種、こだわりビール4種に加え、なぜか佐藤 黒が飲めるおでん屋台」という空想上の存在のような空間がここ青葉山に誕生したのだ。

さて、もう正直、私からこの屋台について特段語ることはない。

「とにかく皆で食べて飲んで喋ったのが楽しい」

それに尽きるのだ。

あとは写真を観て其の雰囲気を更に感じていただければ幸いだ。

先生方が去ってなお盛り上がりを見せる「青葉山おでん」

図らずしてこの暖簾の通りに千客万来を体現することとなった。ビールの暖簾もいい仕事してる

赤星。普段なかなか見かけずお店にあるだけで嬉しいのに、この屋台では好きなだけ飲めるのだ

なめらかな天板にサッポロのグラスが映える。粉まみれになりながらヤスリがけをした甲斐があった

放射状に伸びる赤い光。 青葉山、いや世界の中心はここにある

さて、開店から二時間が経過した。

計画当初は当然のように「朝まで屋台で飲み明かし天板に突っ伏しているところを大将に『もう朝だよ』と起こされる」までをテンプレとして実践するつもりだったのだが、

あまりの寒さにみんな研究室に退避してしまった

そう、この日は関東東北に寒波が到来し東京で初雪が降った日の翌日なのだ。

吹きすさぶ寒風に熱燗だけでは抗えない。生命の危機を感じ、音速で屋台をばらして研究室に撤収した。

しかしこれで終わるれるわけがない。

さあ、未完のつまみと酒を楽しもうじゃないか!

そして始まる惨事会

魚釣り後輩によるマコガレイとアイナメのお刺身、そしてアジのなめろう!新鮮でうまい!日本酒が進む!!

欲望のままに焼き鳥! そして左奥には朝市で仕入れたフグが!ビールが進む!!

僕のPCに乗っかっていた豚ネギ豆腐は美味しい肉豆腐に! 光の速度で鍋が空に!!(パリッコ先生のレシピを参考にさせて頂きました)

そして食後に飲むのはウィスキーエキスパートの後輩が作る「生姜漬けウォッカとジンジャービアのモスコミュール」!!!!!


もう何も言うことはない!間違いなくこれは世界一の飲み会だ!!!


終わりに

思いつきから始まったこの計画。しかしそうして完成したこの屋台は決して「素人がつくったまるで本物のおでん屋台のようなもの」ではない。

「酒呑み達が理想を追い求め創り上げた、世界に一つ、真似事ではない本物のおでん屋台」なのだ。

完成に至るまで様々に鮮やかなアイデアや買い出しに協力してくれたメンバーには心から感謝したい。本当に良いものを創ることができた…ありがとう。

しかし、感傷に浸っている時間など無い。

というのもこの屋台、制作費がなかなかにかさみ、

席料(本当の意味での席料)が一人4000円と、ほぼボッタクリめいたお会計となっている。

この莫大なテーブルチャージを回収するため、我々はこの屋台でやる新しいネタを考え、一回でも多く屋台を開くことが求められているのだ。

すでに次の屋台ネタとしては鍋屋台、洋酒バー、はたまたケバブ屋台と言いたい放題に提案がなされている状況。しかしそれがどんなコンセプトの屋台であったとして、僕はこの屋台をきっかけにして研究室の皆で楽しく飲むことができればそれで満足なのである。

本当に次のオープンが楽しみだ。


最後に:この屋台はあくまで研究室の打ち上げのために制作したものであり、飲食物の販売を目的としたものではありません。そのため仮に青葉山に赤提灯が灯っていたとしても「大将、今やってる?」と言ってお酒や食べ物を買うことはできませんのでご了承ください。