Mashing to Fermentation

本稿では自家醸造においてフルマッシングないしオールグレイン(破砕済みのモルトから麦汁を作り、それを発行させる)でビールを作る手続きについて説明していく。

自身も最初はモルト缶からスタートし、モルトエクストラクトとフルマッシングをミックスさせたパーシャルマッシングを経て、最終的に袋詰されたTHE穀物という見た目のモルトからビールを作り出すフルマッシングに至ることになった
何も知識がない状態で自家醸造の参考書を見ると、THE穀物からビールを作るフルマッシングは工程が一気に増え、非常に複雑に見えた。しかし、それぞれの工程が持つ役割を理解すると、それぞれの工程で抑えないといけないポイントが分かり、どんな段取が必要かがわかる。
今では逆にこれだけシンプルな工程でこれだけ美味しい飲み物ができるとは、発酵は正しく錬金術であると認識を新たにすることとなった。

ということで、早速素晴らしきフルマッシングの世界について述べて行きます。


全体の工程
自家醸造における工程は、主として下記のようになる

  工程名概要所要時間 
 1 スターターの仕込み 発酵に必要なだけの量の酵母を予め培養しておく 1日
 2 マッシング 穀物に含まれるデンプンを酵母の餌となる糖分に変換し、ウォート(麦汁)を作る 2時間
 3 ボイリング ウォートを煮沸し殺菌する。また加熱によりモルトの風味を強くする。また煮沸中に複数回に分けてホップを投入し、香りと苦味を付与する。 2時間
 4 ウォート冷却 煮沸完了後のウォートを酵母が投入できる温度まで急速に冷却する。 30分
 5 ラッキング ウィートに含まれる不純物をろ過し、発酵容器に移送する 10分
 6 発酵 ウォートに酵母を加え、ただの甘苦い麦ジュースを可憐なるビールに変える。 1~2周間
 7 ボトリング 完成したビールをボトルに移し替え、瓶内二次発酵により炭酸を入れる。
 1ヶ月以上

所要時間を合計すると、約1.5ヶ月程度となる。かなり時間の掛かる趣味であるが、やはり自分でレシピを組んで、工程を経て、瓶詰めして、王冠にProduct No.を書き込んで造り上げたビールは最高である。繰り返すたびに工程の最適化が図られ、腕が上がっている感覚があるのも楽しい。

それぞれの工程について写真を交えて解説していく。


1.スターターの仕込み

記事のタイトルとしてMashing to-と書いたのに、早速Mashing以前に行う必要がある工程をここで紹介する。
後述する発酵の工程では、発酵させる麦汁の量と比重(濃度)に対して、投入すべき酵母の数に適切な値が存在する。ここでこの値よりも多くの酵母を投入することをオーバーピッチング、一方少ない場合をアンダーピッチングと呼ぶ。(ウォートに酵母を投入することをピッチングと呼ぶ)
オーバー/アンダーピッチングのもたらす効果については後述するが、要するに適切な発酵にはある程度の数の酵母が必要ということである。

ここで一般人が購入できる酵母パッケージに含まれる酵母の総数は、大抵の場合必要とされる数に対して不足しているため、麦汁を作るまえに適切な数まで酵母を増殖させておく必要がある。必要なだけパッケージを買えばいいというのもそのとおりなのだが、酵母はなかなか高い(1パッケージあたり1000円以上)

という事で、まずは必要な酵母の数を計算することから始める。
酵母数の計算には醸造関連Webサイトの計算機を使うのが楽だ。有名なところだとBrewer's Friendがある。
https://www.brewersfriend.com/yeast-pitch-rate-and-starter-calculator/

UnitsはMetricに設定し、Sugar ScaleはGravityにしておく(Platoは使ったことがない)
後は目的とする麦汁の初期比重(OG : Original Gravity)とその量[L]を入力する。
■Target Pitch Rateについて
普段は適当に選んでいるが、その根拠について記述があったので訳しておく。
Pitch Rate(ピッチングレート)はウォートの比重および菌株に合わせて変更する。例えば選択肢の中にある「Middle of the road Pro Brewer 0.75」は初期比重が1.060以下の場合に選択し、その比重を超えるような場合には「Pro Brewer 1.00 (high gravity ale)」を選択すると書いてある。比重が高くなればその分多くの酵母が必要になるが、その数は純粋な比例関係にはないということだ。

ここで計算式の中身はどうなっているかというと、
必要酵母数[-]=ピッチングレート[-]×ウォート体積[ml]×糖度(プラトー)[%]
この式の出典については追いきれてはいませんが、多くのクラフトブルワーが採用し、問題のないことは確認されています。