American Pale Ale


夏が終わり、秋が到来した。秋といえばペールエールでもゆっくり飲みたい時期である。ということで、パーシャルマッシングでアメリカンペールエール、言い方を変えれば「よなよなクローン」を作ることにした。

2017/10/09 ウォートチラー開発

前回UBL-010のパーシャルマッシング仕込みの際に明らかになった問題としては、煮沸後の麦汁の冷却工程に時間がかかり過ぎたことが挙げられる。前回は熱々の麦汁が入ったステンレス鍋を水をはったバスタブにつけることでせめてもの冷却を行っていたが、強制対流無し&低熱伝導体であるステンレス鍋を介した冷却の時点で、熱の移動速度などたかが知れている。結果として冷却には数時間を要し、酵母投入は翌日朝となった。

前回は幸いにも結果としてトラブルは起きなかったが、今回は冷却方法の改善を行いたい。単純に仕込みにかかる時間を短縮したいのもあるが、煮沸後の冷却速度を高めることでのメリットも存在する。煮沸直後の高温の麦汁を急冷すると、「コールドブレイク」と呼ばれる現象が生じる。急激に温度を低下させることで、麦汁中に含まれるタンパク質の凝縮と沈殿を促進出来るというものである。麦芽から麦汁を作るマッシングではウォート中のタンパク質量はモルトエクストラクトを用いた場合と比較して圧倒的に多いため、ぜひこの工程を取り入れたかったのである。


ということで、「ウォートチラー」を製作するために、なまし銅管を購入した。直径は8mm、肉厚は0.8mmである。熱抵抗を考慮して肉厚は極力薄いものを選ぶ。当初モノタロウで購入しようと考えていたが、最短で10mと長すぎるため、結局Amazonで購入した。Amazonでなまし銅管を買う時代…



部屋にあるあらゆる円筒形オブジェクトに銅管を巻きつけて、段階に分けて銅管コイルを作った。梅酒瓶→ヨーグルトメーカーのガワ?→ヨーグルトメーカーの発酵容器の順である(全く参考にならない情報。
上部に突き出す部分は手曲げで頑張ったものの、やはり難しく、歪な形になってしまった。素直にパイプベンダーを導入すべきだったと後悔している。こういうところでケチってはダメなのだ。
写真の銅管コイルにホースをホースクランプで固定したら完成である。内部に水道水をガンガン流せばみるみるうちに麦汁は冷えるだろう。(といいつつステンレス鍋の熱抵抗と熱交換面積に対して、今回ウォートチラーがどれほど優位性があるのかについては計算してない。あとでちゃんとやります。



2017/10/09 仕込み


前回のWeizenと同様、今回もアドバンストブルーイングのキットを利用する。麦については下記のような構成だ。
ペールモルト295g / ウィートモルト405g / クリスタルモルト(スペシャルモルト)142g / モルトエキス1153g / ホップ:Cascade / イースト: Safale S-04




このパックの中にペールモルト、ウィートモルト、そしてクリスタルモルトが既にブレンドされている。とてもありがたいキットである。

ここでクリスタルモルトとは麦芽に水を含ませた後、ゆっくり加熱して造られたモルトであり、通常の麦芽とは異なり糖化力が無い。水分を含んだ麦芽を加熱することで、麦芽内部で糖化が行われ、デキストリンが生成する。酵母はこのデキストリンを発行することが出来ないため、クリスタルモルトをマッシング時に加えることで、ビールにボディと甘みを付与することが出来るというわけだ。
この様に、スペシャルモルトとはクリスタルモルトのように糖化力はないが、ビールに特徴を付与するために加えるモルトを総称したものである。他にもチョコレートモルトなど、ビールにロースト色と風味を付与する目的で投入される物もある。



また今回、マッシング方法として、BIAB方式を採用してみた。BIABとはBrew in a Bagの頭文字を取った言葉であり、その名の通り、バッグの中で醸造工程を進める手法である。ただ醸造工程といっても実際にバッグが使われるのはマッシングのみである。
通常、マッシング作業には多くの鍋を用いるのが一般的でそれらを使い分けながら複雑なロータリングという工程を踏んで糖化を進めていく。しかし、BIABではその必要はなく、工程は極めてシンプルである。
バッグのなかにモルトを入れてマッシングを行い、工程が終わったらバッグごと引き上げるだけだ。

UBL-010では、BIABともロータリングとも異なるマッシング手法を取っていた。具体的には小鍋にモルトをそのまま放り込んでマッシングを行い、完了したら丸ごとざるをセットした大鍋にあけて麦汁と麦芽殻を別々に回収するといった方法である。本手法はアドバンストブルーイングのレシピノートに記載の方法であり、非常にシンプルでやりやすいものであった。
そしてBIABによるマッシングには、糖化効率と熱容量の観点で更なるメリットがあると考える。

・糖化効率の観点
大鍋に大量の湯を張ってその中で一気にマッシングを行うため、小鍋を用いる場合と比べて糖化効率が上がる。これはマッシュ液の濃度を低く保てるからである。フィックの法則で纏められているように、物質はその濃度が高い方から低い方へ拡散し、その拡散速度は濃度勾配に比例して増大する。そのためマッシングにおいても大量の水を用いてマッシング中の糖分濃度を低く抑えたほうが抽出の効率は上がるのである。

・熱容量の観点
鍋に入れる湯量が多いとマッシュの熱容量も大きくなるため、マッシング作業中の温度低下が小さくなる。筆者は保温ベースでマッシング作業を行っているため、90分のうち再加熱の頻度を減らすことが出来る。これは大きなメリットである。



ということで早速大鍋にバッグを設置して水を注ぎ、湯温を上げ、既定温度になった所でモルトを投入した。マッシュの温度が68.4度になっていることを確認し、保温をスタートする。



今回は保温のためにダンボールとタオルで保温ボックスをこさえてみた。何もしないのと比べれば温度低下はかなり防げるはず。



これでせわしなくコンロの火をつけたり消したりしなくてすむ。ビールでも飲みながらのんびりいこう。



90分後、マッシュ温度を76度まで上げてマッシュアウト。
ザルの上にグレインバッグを上げ、適当に湯を上からかけてスパージング。このあたりの細かい工程はもう忘れた。



続いて煮込み工程。IHヒータを使ってどんどん煮込む。煮込み時間は90分。



ビタリング用、アロマ用に分け、カスケードホップを投入する。アメリカンペールエールへの香り付けとして、カスケードは王道である。既にいい香りがする。



ウォートチラーの煮込み。
煮込みがもうそろそろ終わるタイミングで、ウォートチラーの殺菌をする。初の実戦投入なので一応念入りにやっておきたい。



こいつがどうなってもいいのか!?の図



うわあああ。
完璧に浸かりました。現在液温94.3度。地獄のような温度。ここから水をチラーに流し、急速冷却する。



冷却過程でホコリ等が入らないよう、表面をアルミホイルで覆う。
何だこの真空関連実験装置の様相は。ここは半導体関連の実験室か?無骨に伸びる2つのホースがイカス。

前回試行では冷却までに半日を要していたが、今回は30分程度で酵母投入可能温度域までの冷却に成功した。やはりアクティブな熱交換こそ正義なのだ。



ということで初期比重(OG)測定。
25.1度で1.054。温度補正をすると1.0568。レシピ記載の比重が1.048であるから、やや糖度は高めに仕上がった形だ。
加水してもよいのだが、むしろそれくらいのほうが飲みごたえがあって良い気もするのでこのまま行く。



発酵容器への移送が完了。今回は10L全てを同一レシピで仕込むため、ポリタンクで纏めて発酵させてもよいのだが、やはり内部の発酵の様子が見えたほうが楽しいので梅酒瓶にした。



酵母は王道のSafale S-04。 液体酵母を購入することも考えたが、S-04についてはペールエール用液体酵母と同一の酵母が採用されているとの情報を観て、今回はこちらを採用。

エアレーションを行い、酵母をふりかけたら仕込は完了。



今回はドライホップもレシピに織り込み済み。10L仕込みでこの量はちょっと少ない気がするが、アドバンストブルーイング流はこのぐらいなのだろうか?
ともかく、今回はレシピに忠実に行く。

投入タイミングは発酵が完了した時点。そこから3日か5日間ホップを浸漬し、香り付けを行う。
発酵が完了するまで一週間ほどかかるので、ボトリングまでは長く見積もって2週間ほどかかる見込みだ。
たのしみ。


2017/10/22 ボトリング

二週間後、ついに瓶詰めの時が来た。


最終比重(FG)測定。値としては20度で1.012程度だろう。
初期比重と最終比重の値からABV(Alcohol by Volume)が計算できる。
計算にはこのサイトが便利だ。
なお今回のバッチにおいて計算されるABVは5.78%である。



今回瓶詰め工程についても改善を行い、上図のように100円ショップで購入したスチールメッシュフェンスを瓶の水切りに利用する。これは楽だ。



いつものように王冠の煮込みを作る。

あとはボトリング用タンクにプライミングシュガーを投入し、発酵容器中のビアをボトリング用タンクに移し、いつも通りにボトリング。
もう慣れたものだ。




瓶詰め完了。完成したビールの開栓時より、瓶詰めが完了した時の達成感のほうが大きい気がする。



2017/10/28 試飲