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Sealing

流体をシール(密閉)し、エグゾーストキャノンにおけるピストンを形成する手法について詳しく説明していきます。


まな板方式
従来一般的とされていた方式であり、まな板を円形に加工しピストンとするものです。
まな板は切削性が良く日常的に手に入る素材としてはある程度使いやすいものです。

円形に加工する方法は自在錐と呼ばれるサークルカッターの大型版を使うのが一般的です。
このように自在錐でおおまかに加工した後、

ドリルやボール盤に取り付け外周を研削し、シリンダーとのクリアランスを詰めていきます。

実際に取り付けるとこのようになります。

但しこの方法はピストンとシリンダーとのクリアランス調整が非常にシビアであり、かつ製作が面倒、摺動抵抗も大きく、シリンダーに足場単管等の凹凸のあるパイプを用いた場合、気密が確保できないというデメリットが有ります。
これらのデメリットを解決したのが後述するサンドイッチ方式です。


サンドイッチ方式
まな板方式に合ったデメリットをすべて解消したのがこのサンドイッチ方式です。
ゴム板を二枚の金属製大径ワッシャーでサンドし、それをナットで締め上げることでピストンを形成します。

クリアランス調整はワッシャーを締めるナットの締結力を調整することで容易にでき、またゴム板であるために多少の凹凸は問題なくシールすることができ、足場単管の溶接の継ぎ目を無視することができます。

またゴム板のエッジ部の片側を削り、横から見た時に台形にすることで、多少逆止弁的な作用を得ることもできます。
逆止弁に関しては下の「Oリングを用いた逆止弁型ピストン」の章で説明します。


空気入れピストン流用方式
アリエナイ理科ノ工作にて登場するプロトタイプ機に採用されていた方式であり、簡易でかつ高い性能が得られる方式です。
ホームセンター等で販売されている自転車の空気入れにはゴム製のピストンが入っており、これを上下に往復させることで空気の圧縮を行っています。
この部分は押した時に空気が入り、引いた時には空気が抜けていくという逆止弁の構造となっています。
これをそのまま流用してしまうという方式です。
右側の台形のゴム製のピストンがそれです。
このピストンはホームセンターの自転車コーナーで補修部品として安価に販売されています。

二重筒式の説明における「3.圧縮空気の充填」において、ピストンとシリンダーのクリアランスに関しては、わずかに空気が通れる程度の密着と記載していました。
しかし空気入れピストンは逆止弁の構造と成っているために、クリアランスを考えなくとも、エアーを導入した際はスムースに流れ、そして発射の際は圧力差をしっかり保持し荷重を受けてくれます(エア導入時は空気入れの引きの動作、発射時は圧縮の動作にそれぞれ相当します。)
詳しくは下の「Oリングを用いた逆止弁型ピストン」の章で説明します。

問題としては、当然の事ながらサイズが空気入れの内径に限定されてしまうことです。
約30mmほどの内径を有するシリンダーを用いるキャノンを作る際にはこのピストンが流用できます。


Oリング方式

Oリングとは断面がO形の環状パッキンであり、流体機械には極めて多用されている流体シールのための部品です。
この世の中はOリングなしでは成り立ちません。

Oリングのシール原理を説明していきます。

Oリングは一般的に以下に示す写真のように丸棒に旋盤で溝を掘り、そこにはめこむことで使用します。溝を掘った丸棒とOリングがセットに成ることで一つのピストンが構成されるということです。


このピストンをシリンダーに挿入した時の模式図を以下に示します。

黒の●がOリングの断面を示しています。
このピストンに対し、右側から高圧の流体を導入します。
この時Oリングは差圧によって左側の溝に押し付けられ変形、シリンダー内面と密着し流体をシールします。
すなわちOリングが圧力のバンダリとなり、このピストンは左へ力を受けることになるのです。

また原理上、ピストン左右での差圧が大きくなればなるほど、よりOリングは変形、シリンダーに押し付けられるため、
そのシール性能は差圧が大きければ大きいほど向上します。
シールはOリングが変形に耐え切れず千切れるまで維持され、最大で約7MPa程度のシールが可能とされています。


Oリングを用いたピストンのメリットとしては、摺動抵抗の低さとシール性能の両立が挙げられます。
サンドイッチ方式やまな板方式では、シール性能を向上させようとすると必然的に摺動抵抗が大きくなってしまいますが、Oリング方式では摺動抵抗は小さく、シール性能は高圧時ではほぼ完璧です。

デメリットとしてはシリンダーの精度が求められるということです。
例えば足場単管は内部に以下の画像のように溶接の継ぎ目が存在します。
この部分が存在するためにOリングを用いたシールはできず、使用するためにはヤスリ等でこの継ぎ目を削り落とす等の工夫が必要になります。
ヤスリで溝を削り落とすとこのようになり、この程度の段差であればOリングを用いたシールが可能です。

構造用鋼管(STK鋼管)は一般にこの内部の継ぎ目がほぼ無視できるレベルであり、継ぎ目落としの作業をすること無くシリンダーとして流用することができます。
強度も高く、鋼材屋に問い合わせればほぼ取り扱いがあるので非常に有用なパイプ素材です。
(2015/5/26追記:すべてのSTK鋼管が継ぎ目が無いわけではなく、物によっては足場単管よりも継ぎ目がひどく、当たり外れがあるようです。購入の際には自分自身で確かめることが必要と思われます。)

さらにシームレス鋼管はシリンダー素材として最適なのは言うまでもありません。(高価ですが…)
また一本しか触ったことはありませんが、一般的にガス管と呼ばれるSGP鋼管の内面はかなり荒れていた記憶があります。
シリンダーとして各種パイプを流用する際には内面のチェックが重要です。


またデメリットとしてもう一つ、Oリングを用いたピストンは制度が求められるため、旋盤等の工作機械がないと製作することが不可能です。
Oリングの潰し率を適切に設定しなければ理想的なシールは得られないため、その精度を出すのはやや神経を使います。
つぶし率に関しては以下のサイトが参考になります。

構造的には径の異なる円盤の積層で製作可能なため、3Dプリンターやレーザーカッター等を使って製作するのも手かもしれません。


Oリングを用いた逆止弁型ピストン

実際にエグゾーストキャノンのピストンとしてOリングを使用する際には、一つ達成すべき要素があります。
それは逆止弁の機能を持たせることです。

二重筒式の説明における「3.圧縮空気の充填」において、ピストンとシリンダーのクリアランスに関しては、わずかに空気が通れる程度の密着と記載していました。
この表記はあくまで、「まな板方式やサンドイッチ方式が主流だった際の説明」であり、Oリングを用いたそれには不適切です。

このピストン部分に必要な要素は
1.充填時にはエアーが流れる
2.射撃時にはエアーを流さずピストンとして作用する
この2つです。
1の「充填時にはエアーが流れる」というのが上の図に相当します。この部分の性能によって充填に要する時間が変化します。
2の「
射撃時にはエアーを流さずピストンとして作用する」というのが上図の様子です。ピストンの右側のエアーを抜き去った際に、1で左側のチャンバーに充填したエアーが右へ流れず、ピストンに圧力がかかっている状態です。

すなわち、エグゾーストキャノンのピストンについては一方向にだけ流体を通す逆止弁構造を取る必要があるのです。
それを達成する構造について具体的に説明していきます。


逆止弁ピストンの原理と製作

この構造は電動エアガンの「ピストンヘッド」と呼ばれる部品を参考に設計してあります。

上図のようにOリングを用いたピストンに復数の穴を設けた形状となっています。
このピストンの断面の模式図を以下に示します。
左側に穴が設けられています。

左側からエアーが流入した際、穴がない場合ではOリングが変形、シリンダー内壁に押し付けられエアーはシールされていました。
しかし上図のように一方に穴を設けるとこの穴を通ってエアーが右側へ流れていくため、Oリングによるシール機能を発現させずに流体を右側へ通すことが可能になります。
これはエグゾーストキャノンの充填シーケンスである1の動作を満たしています。

次に右側からエアーを流入させた時の様子が上図です。
するとOリングは圧力によりシリンダー内面に密着し、エアーはシールされます。
すなわち2の動作を満たしており、ピストン左右の差圧により左側へ荷重を受けることができます。

実際にこのピストンヘッドをエグゾーストキャノン用に最適化して製作した物が以下のピストンです。
2つのパーツに分割して製作してあります。
Oリングをはめ込むとこのようになります。また素材はPOMを用いることで、軽量性とPOMの自己潤滑性による摺動性能とで、よりその性能を高めています。

ここまでで一つ疑問に思われた方もいるかもしれませんが、エグゾーストキャノンの発射シーケンスには以下の図で示した段階が有ります。
ピストンに右側からエアーを流入させ、その圧力によってピストンを左へ移動させるという動作です。
この際上の説明では「ピストンに駆動力を生じさせること無くエアーが右側へ流れていく」と表記しましたが、実際にはこのピストンをエアーが通過する際に抵抗(圧力損失)があるため、ピストンにはそれなりの荷重左向きのが生じ、問題なくこの動作は実現されます。この部分はピストンに開ける穴の数や穴、また形状を変更することにより調整可能です。


まとめ

Oリング方式がもっとも性能が高いシール性能と摺動性能、そして完璧な逆止弁構造を実現できるため、旋盤等の工作機械を持っている場合はこの方式を採用するのが一番です。
それ以外ではサンドイッチ方式が無難です。